相続税の税務調査


平成27年1月1日より基礎控除の大幅な減額に伴い課税対象者も約2倍となりました。

そのため今後ますます相続税の税務調査も身近なものとなってくるのではないかと考えられます。

相続税の税務調査は他の税目に比べ非常に高い確率で実施され、1件あたりの平均追徴額も非常に高額になることはあまり知られていないのが現状です。

そこで、今回は今後増加していくであろう相続税の税務調査について、確認していきたいと思います。

 

相続税の税務調査はどのくらいの確率で行われるのか?


相続税の税務調査実施割合は約23%です。つまり4人~5人に1人の割合で実施されています。

他の税目の税務調査割合は、例えば、法人税であれば約3.3%、所得税は約0.3%です。

つまり、相続税の税務調査の実施割合は、法人税に比べ、約7倍所得税に比べれば約76倍になります。また、追徴税額も1件あたり約597万円と非常に高額です。

(平成27年国税庁統計データより)

税務調査の対象となる人とは?


相続税の税務調査は非常に高い確率で行われますが、特に以下のような方が税務調査の対象となることが多いように思われます。

  • 申告書に誤りがある方
  • 納付税額が多い方
  • 無申告の方
  • 分割協議が整わず、相続人ごとに申告書を提出している方

 

相続税の申告書に誤りがある方

税務署は申告書をスキャンし、誤りの有無を判断しているといわれています。

そのため、誤りがあれば調査対象となりやすいと考えられます。

所得税の申告と違い、税理士の関与割合が高い相続税申告では自分で申告を行う場合には計算ミスが生じないように特に注意して記載する必要があります。

 

納付税額が多い方

相続税の税率は累進税率によっています。財産をもっていればもっているほど相続税がかかります。そして、財産を多く保有している方ほど、申告内容が複雑になります。そのため、申告漏れが生じやすく、また、税務署サイドにとってみれば、財産の漏れを指摘した場合に徴収できる金額が多くなるため、納税額が多いほど調査対象となりやすいといえます。

 

無申告の方

平成27年1月1日以後発生の相続から基礎控除が大幅に減額されました。そのため、改正により相続税をそれほど意識していなかった方も相続税の課税対象となりました。

税務署という組織は無申告者を最も悪と捉える組織です。過去の申告書の累積や不動産データなどから無申告者には厳しく対応してきます。

 

分割協議が整わず、相続人ごとに申告書を提出している方

遺言がない場合には、相続人全員で協議を行いますが、この協議が相続税申告までにまとまらないときは未分割として申告書を提出します。このようなケースでは、相続人が各自で相続税申告書を提出することが多くなります。当然、同一の申告内容とはならず、税務調査が実施される確率が高くなります。

税務調査の当日の流れ


運悪く税務調査が実施されることとなった場合でも、税務調査の当日の流れだけでも知っておくと対応も落ち着いて受けることが出来るのではないでしょうか。そこで以下では当日の流れを確認したと思います。

 

実施期間は?

相続税の実地調査はほとんどの場合、1日で終了します。しかし、実地調査だけでは税務調査が終わることはほぼありません。大体は調査後2~3週間で調査官は収集した資料の裏付けなどを行い指摘事項を通知してきます。ここから、指摘事項に対し、必要に応じ交渉していくことになります。そのため、1つの調査が終わるのは早くても1か月程度。長ければ数か月にわたることになります。

 

スケジュール

大きく午前、午後で分かれます。

(午前)

10時に開始されることがほとんどです。

午前中は、亡くなった方を中心に相続人や親族の方などについてヒアリングします。

話が上手な調査官は無駄話も織り交ぜながら相続人が話しやすい環境を作り出すのが上手です。

12時少し前に終わることがほとんどです。

(午後)

13時に始まります。午後は午前と違い、様々な場所を確認されます。金庫や印鑑などは必ず確認されます。貸金庫なども一緒に同行する場合もあるため、整理しておくことが重要です。

16時ごろ終了する場合が一般的です。 

相続税税務調査の際によく聞かれる10のこと


相続税の税務調査の際、調査官より多くの質問をされることになります。

以下では、私が実際に調査立ち合いを行った際に出た質問とその質問の意図をまとめてみました。

 

1 被相続人の職歴

必ず聞かれる事項です。

被相続人の職歴を聞くことにより、収入金額や退職金の額などの予想がつきます。

また、勤務地を把握することにより、勤務地近くの銀行口座などが残っていないかなどを確認します。

2 相続人の職歴や家族の状況

相続人の職歴等を確認することにより、相続人が保有する預金残高などが相続人の収入により形成されたものであるかを確認します。仮に相続人の収入のみで預金残を形成することが難しい預金残であれば、被相続人の名義預金であった可能性があると考えます。

3 不動産の購入や売却に関する資金の行方

不動産の購入や売却に伴い多額の資金が移動することになります。このような場合には、被相続人と相続人の間で金銭のやりとりが多く行われるため、被相続人の財産の移動の有無を確認をします。

4 被相続人の病状等

被相続人の病状等についても確認される事項です。

ここで確認していることは、被相続人が意思決定を出来るような状態がいつまでであったかということです。生前贈与の確定要件が、お互いの贈与の意思が存在することであるため、非常に重要なこととなります。

5 預金の管理者

預金の管理や生活費の管理をだれが行っていたのかも確認される事項です。

当然、預金管理者が被相続人の預金がどのように使われていたのか最も知っている人物です。不明出金などについて詳しく確認されることになります。

6 重要書類の保管場所

自宅の金庫や貸金庫については必ずチェックされます。調査前には余計なものが入っていないか必ずチェックを行っておく必要があります。

7 遺言書の有無

相続人全員で合意し、遺産分割協議書を作成した場合でも、遺言書があれば内容を確認します。遺言書に申告書に計上されていない財産があるかどうかをチェックするためです。

8 加入している生命保険等

死亡保険金については、すでに保険事故が発生しているため、漏れが生じることはありません。しかし、被相続人が保険料を支払っていたが保険事故が未発生である保険契約については、相続財産に含まれることになります。相続税申告では非常に漏れが多い財産の一つです。

9 印鑑の利用について

印鑑についても確認されます。申告書やその他の重要書類に押されている印鑑について照合していきます。実際に印鑑をだれが使用していたのかを確認します。普段から印鑑の管理をしておくことは非常に重要です。

10 名義株の有無

現在は1人でも会社を設立することが出来ますが、平成2年以前は株式会社を設立するには発起人が7人以上必要でした。そのため、名義を借りて会社を設立することが多く行われていました。特に親族の名義を借りている場合には、相続税の調査において、実質的な名義はだれであるかを確認されるため、歴史がある会社では注意が必要です。