融資・資金繰り

消費税の経理方式で営業利益が変わる?金融評価に影響する意外な盲点とは|信金担当者との実例付き解説


消費税の経理方式は税込経理方式と税抜経理方式があります。

会計が発生主義により行われていれば、どちらの方法を選択しようとも最終損益に差異は生じません。

しかし、売上総利益、営業利益など各利益には影響するため注意が必要です。

以下では経理方式を巡って、信用金庫担当者から受けた相談をご紹介します。

【事例】

お付き合いのある信用金庫担当者JさんよりJさん担当のA社について相談を受けました。

A社は国内で商品を製造し、大半を輸出している企業。

そのため決算後に多額の消費税還付が経常的にある会社のようでした。

本件は経理方式の違いにより金融機関の評価に大きな影響があることを知った相談事案となりました。

Jさん
Jさん

今回は私が担当しているA会社で少し悩ましいことがありまして・・・

ひらい
ひらい

Jさんの担当先の会社で困ったことですか?

Jさん
Jさん

A社は自社工場で作成した商品の大部分を海外に輸出している会社なのですがコロナの影響もあり、2期連続で営業利益がマイナスとなってしまったんです。

進行期もあと2カ月ほどですが、営業利益はマイナスとなりそうだということで当行としても追加融資について慎重に検討する必要が生じています。

ひらい
ひらい

なるほど、3期連続営業マイナスですか・・・・。

厳しいですね・・・・。

経常利益も当然マイナスなんですよね?

Jさん
Jさん

いいえ、それが経常利益はプラスとなっています。

輸出業者なので消費税還付額が多額に計上されているため、何とか経常利益は出ている状態です。

ひらい
ひらい

なるほど、輸出業者であれば毎年経常的に多額の消費税還付が発生するからそのような状態となっているわけですね。

そのあたりのことを稟議書などに記載してバックアップする方向性はどうなんですか?

Jさん
Jさん

私も純粋な赤字決算ではないので稟議書や補足資料でそのように説明をしたいところなのですが

そもそも営業利益が出ていない状況だと当行の格付上も低評価になってしまい、定性要因で格付けを引き上げることも厳しいんですよね。

そのため、そもそも損益計算書上も営業利益が出るようにしてもらわないと厳しい評価をせざるを得ないですよとA社の社長にはお話をしたんです。

Jさん
Jさん

A社の社長さんからは「純粋な赤字ではないので何とかしてほしい」と泣きつかれてしまっていて・・・・。

私の気持ちとしても純粋な赤字でないということが引っかていて・・・。

消費税の還付金を売上に計上するわけにはいきませんし、何か良い方法はないものですか?

ひらい
ひらい

確かに消費税の還付金額を売上に計上するのは明らかに間違ってますよね・・・・。

ひらい
ひらい

ん~・・・・(悩み)

ところで、経常利益で黒字が出ているということは営業外収入に雑収入で計上されているということですよね?

Jさん
Jさん

そうです。

ひらい
ひらい

そのように処理をしているのであれば、消費税の経理方式は税込経理方式によっているはずです。

これを税抜経理方式にて処理をすれば営業利益もしっかり出てくると思いますよ。

Jさん
Jさん

なるほど!!!

損益計算書自体を全部税抜で処理出来れば、確かに営業利益がでますね。

ただ、あと2カ月ほどで決算なのですが、その処理は間に合うものですか?

ひらい
ひらい

会計ソフトを利用していれば、ボタン一つで税込み、税抜きを選択できますので問題ないはずです。

今まで税込経理であれば税抜経理に変更したということをしっかり決算書の注記に記載してもらったうえで対処すれば良いのではないでしょうか?

Jさん
Jさん

いや~、消費税の経理処理によって、ここまで影響があるとは私自身も思ってもみませんでした。

これで問題解決です。

早速、A社の社長へ今日の話を伝えてみます。

まとめ

  • 消費税の経理方式には「税込経理方式」と「税抜経理方式」があり、どちらを選んでも最終的な純利益(法人税計算上)に差は生じないが、営業利益・売上総利益といった途中の利益指標には影響を与える。

  • 特に、輸出業者など消費税還付を受けている企業の場合、税込経理方式では還付額が「営業外収益(雑収入)」として計上されるため、営業利益が低く見えてしまう可能性がある。(営業利益は、金融機関の格付けや追加融資判断に大きな影響を与える重要な指標)

  • 事案によっては、経理方式を「税込」から「税抜」に変更することで、実態に近い営業利益が損益計算書上にも反映され、金融評価の改善につながる可能性がある。

  • 経理方式の変更は、適切な注記や説明があれば可能。
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