融資・資金繰り

ゼロゼロ融資の借り換え検討中にわかったこと(政策金融公庫)

コロナ融資の返済が7月から本格化すると新聞やメディアで騒がれているなか、弊所でも資金繰りのため、借り換えを検討しているお客様が増え始めています。

コロナ融資は政策金融公庫バージョンと民間金融機関バージョンがありますが、今回は政策金融公庫からの融資の借り換えについて、実際に検討し、公庫担当者とのやり取りと結果についてご紹介します。※守秘義務のため一部事実を変更しています。)

【事案紹介】

相談者:P社・A社長 公庫担当者:Bさん

コロナ前のP社の状況

浮き沈みはあったため、若干の借入はあったものの資金繰りはそれほど苦しくはなかった。財務内容的にも若干の内部留保あり

最近のP社の状況 コロナ前の状況には完全に戻ってはいないものの、翌年以降の売上回復見込みあり。ただし、コロナ禍での急激な業績悪化により、財務内容が悪化している。

A社長
A社長

アフターコロナになり、徐々に仕事の話を頂けるようになってきましたが、その仕事が終わるまでの資金繰りが心配です。現在返済中の政策金融公庫のコロナ融資について借り換えができると仲間から聞いたのですが、そんなことは可能なのでしょうか?

ひらい
ひらい

現在、国が「コロナ借換保証」という制度を作り、コロナ融資の返済に苦しんでいる中小企業をバックアップしようとしていますが、これは民間金融機関からの融資に対するものです。

これに対して政策金融公庫のコロナ融資については借換制度という新たな枠組みは作られていません。

その代わり、令和5年3月末で終了予定であったコロナ融資について条件を緩和したうえで延長されています。スーパー低利・無担保融資として新型コロナウイルス感染症特別貸付が設けられ、この制度が政策金融公庫の借り換え制度として利用されているようです。

A社長
A社長

なるほど、弊社はその制度を利用するための条件は満たすのでしょうか?

ひらい
ひらい

条件としては以下のいずれかに該当していることです。

①売上が5%以上減少していうこと(最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高が前5年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している場合)

②債務負担が重くなっていること

「債務負担が重くっている」の判断基準は公庫のホームページには記載されていませんが令和5年3月に経済産業省から出されたパンフレットには債務償還年数(借入÷利益)が13年以上と記載があります。

アフターコロナとなり、売上は戻ってきているけど、債務負担が重い企業に配慮する形で②の条件が付け加わったようですね。

ひらい
ひらい

制度内容としては、利子補給自体はR4年9月末で終了していますが、据置期間が最大5年、融資期間も最大20年に延長されており、融資限度額も8,000万まで増額されました。

A社長
A社長

弊所としては、ここ1~2年ぐらいでコロナ前の水準に戻せる目途は立っていますので、若干の追加融資と既存融資を合わせて借り換えを行い、3年ほど据置をお願いできればベストです。

公庫には以下の条件で申し込みをしようかと思っています。

①追加分500万

②据置期間は3年

③返済期間も1年ほど伸ばし、毎月の返済額の軽減を図る。

ひらい
ひらい

そうですね。

借り換えをスムーズにするためにも、公庫の担当者へは、公庫から依頼される資料のほかに今後の事業計画書と合わせて過去5年ほどの推移も提出し、コロナ前に戻った場合のイメージを共有してもらいましょう。

~A社長が必要資料を提出して数日後~

公庫Bさん
公庫Bさん

A社長、資料提出ありがとうございました。

事業計画書と過去5年分の損益推移を出していただき、事業計画書に記載して頂いた金額がコロナ前の通常期の数字と大きく変わらないことからも実現可能性が十分ある事業計画書であることが理解できます。

ところで現状では債務超過となっているため、5年推移の貸借対照表も提出して頂けるとコロナ前は債務超過でないこともわかるため、より融資に前向きな対応がとれると思います。

A社長
A社長

わかりました。税理士さんに資料を出してもらうことにします。

公庫Bさん
公庫Bさん

ところで、据置期間が3年とありますが、この事業計画書のように推移した場合、そこまで据え置く必要はないかと思いますが、なぜ3年据置なのですか?

A社長
A社長

弊所の業種では、アフターコロナとなり、徐々に売上は戻りつつありますが、契約書などはなく、口約束に近いかたちで業務の依頼を受けます。そのため、プロジェクトの途中で業務自体がなくなることもあります。特にここ2年ほどはコロナの影響も大きく、見込んでいた売上が立たなかったことが多く、今後1~2年は同様の状態もあり得ると考えて余裕をみて3年の据置期間をお願いした次第です。

公庫Bさん
公庫Bさん

・・・・・。

わかりました。据置期間については社内で検討します。

~ その後4日ほどで公庫から連絡あり ~

ひらい
ひらい

公庫の反応はどうでしたか?

A社長
A社長

公庫の担当者からは5年推移の試算表が特に好評でした。

事業計画書もしっかり現状分析・課題設定と解決策が記載されており、それを踏まえた今期以降の数字が記載されており、過去の実績からも実現可能性が高いと判断して頂けたようです。

ひらい
ひらい

それでは良い回答も得られたということでしょうか?

A社長
A社長

うーん。

条件面としては、500万追加での借り換え、返済期間の延長は認めて頂けたのですが、据置期間は2年と1年間こちらが望んでいた期間よりも1年間短くなってしまいました。

事業計画書の実現可能性の高さから、据置期間が長すぎるとの判断だったようです。

ひらい
ひらい

確かに事業計画書上は返済原資は十分出るようなものとなっていましたからね。

ただ、この借り換えで時間的猶予は2年間出来ましたので、あとは本業を頑張るだけですね。

A社長
A社長

そうですね。

融資の実行も資料提出から2週間程度で実行されそうなので一先ずは安心です。

あとはコロナ禍で失われた売上分を今後数年かけて余分に積み増せるように頑張りたいと思います。

まとめ

  • 公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用した借り換えは、民間ゼロゼロ融資の借り換え保証制度に比べて金融機関が行う伴奏支援がない分、ハードルは低いと個人的には感じた。
  • 「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は借換保証制度で求められている経営行動計画書の作成は必須要件ではないが、同様の事業計画書の作成を行い、しっかり返済計画を示すことが重要。
  • コロナ前の数字を示し、実際にコロナが改善した場合のイメージを公庫担当者にもってもらうことは予想以上に効果が大きかった。
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