会社設立重要事項融資・資金繰り

社会保険を軽減する方法


毎年上がる社会保険料の負担に苦しんでいる中小零細企業は多く、毎月の支払いであることからこそ何とか負担を減らしたいと考える経営者は非常に多いです。

社会保険の専門家は社会保険労務士ですが、今後も上がり続けると予想される社会保険料の削減は資金繰りにも直結するため経営者は最低限の知識を持ち合わせておく必要があります。

そこで今回は年金、健康保険と負担感がある社会保険を削減するにはどのような方法があるかをご紹介します。

※以下の方法の中には理論上は可能であっても、問題視されているような社会保険削減スキームも存在します。また、社会保険の削減は将来もらえる年金等にも影響します。適用する場合には、自社の状況を十分検討したうえで実行する必要があります。

社会保険料を抑えるため理解しておくべき知識

社会保険料の削減を検討するためには最低限の知識が必要です。

以下の3つはポイントとなりますので理解してから読み進めてください。

算定基礎 

社会保険料は標準報酬月額という金額で決定されます。
標準報酬月額は4月~6月の給与総額の平均で決定され、大きな変更がない限り1年固定されます。

報酬月額

基本給・諸手当のほかに残業手当、通勤手当も含まれます。

社会保険の決定時期

定時決定 毎年7月1日の直前3ヶ月間に従業員へ支払った給与の総額をその期間の月数で割った額を報酬月額として標準報酬月額が決定。(算定基礎により決定)

随時改定 昇給・降級があったとき(継続した3ヶ月の標準報酬月額保険料が2等級以上の差が生じたとき。)

社会保険の削減テクニック15選

以下では社会保険の削減テクニックをご紹介するとともに導入難易度と効果をご紹介します。(難易度と効果は中小零細企業を前提として導入した場合の個人的な見解です)

算定基礎期間の給与を低くする 難易度1 効果2

算定基礎の期間である4月~6月の3ヶ月の残業代を削減できれば標準報酬月額の額が減り、社会保険料の削減が可能となります。(随時改定による増加に注意)

昇給の月を工夫する 4~6月以降の昇給 難易度1 効果2

社会保険料は4月から6月の給与の平均額を基準に決定されるため、4~6月に昇進して基本給が上がると社会保険料の支払額が増加する可能性があります。そのため昇給月を7月以降に変更することで、社会保険料の削減に繋がる可能性があります。(随時改定による増加に注意)

給与の増額幅を工夫する 難易度1 効果2

報酬額を月額表のギリギリに設定をすることにより社会保険の等級が1つ下がります。例え1等級だとしても毎月の負担になりますので、年間だと大きな金額になります。

月末を入社日・退職日としない 難易度1 効果1

入社日、退社日を月末にしないことによって、その月分の社会保険料を支払わなくて済みます。

入社日 月末入社とした場合、例え1日であってもその月の社会保険料の負担が生じます。

退職日 月末を退職日とした場合、退職月の社会保険料の負担が生じますが、月末より前の退職日であると退職月の社会保険料の支払いは発生しません。

社宅を利用(福利厚生の充実) 難易度2 効果2

従業員等へ住宅手当を付けた場合、報酬月額に加算されることになります。

これに対して会社が住宅を借り上げ、社宅として従業員等へ低額で貸し付けた場合には従業員の実質的な賃金を変えずに社会保険の削減に繋がります。

出張手当の導入(旅費規程) 難易度1 効果2

社内にて旅費規程を設けます。

出張手当は社会保険の対象外となります。また、社会保険のみならず、所得税や住民税も非課税とされていることから節税としての効果も期待できます。

事前確定届出を利用する方法(役員賞与) 難易度2 効果2

役員への賞与は原則、税金計算上の経費にすることはできませんが、「事前確定届出給与」というものを提出することにより経費にすることが可能です。

社会保険の等級は給与と賞与それぞれに上限が定められていることから、この上限額を利用し、社会保険の負担が軽減されます。

ただし、この方法は役員の退職金にも影響するため十分注意する必要があります。

高収入の従業員の賞与分を毎月給与へ振替 難易度1 効果2

社会保険の等級は給与と賞与それぞれに上限が定めらえています。

高収入の社員がいる場合、月額報酬については頭打ちの金額となりますが、賞与は社会保険を負担する必要があるため、この賞与を月額の報酬に振り分け、年俸制にすることにより社会保険の削減に繋がります。

マイクロ法人の設立 難易度2~3 効果3

個人事業主の場合、国民健康保険と国民年金の負担が生じます。

所得金額が大きいと国民健康保険は100万円を超え、国民年金を自分と配偶者の負担するとなると合計で150万に迫るような金額となります。そこで、自分の事業の一部を法人成りさせ、その法人で健康保険と厚生年金に加入します。その際、役員報酬については少額としておくことにより社会保険の負担が少なくなります。

ただし、マイクロ法人で営む事業は個人事業とは異なる業種で行う必要があることから、導入ハードルは高いといえます。

非常勤役員の利用 難易度1 効果1

非常勤役員には社会保険の加入義務はありません。そのため、出勤日数の少ない役員を非常勤役員とすることで、社会保険料の削減に繋がります。

国保組合の継続 難易度2 効果3

国保組合に加入していた個人が法人成りをする場合、そのまま国保組合に加入することができる組合も存在します。協会けんぽとどちらが有利になるか確認のうえ国保組合の加入を継続することで社会保険の削減を図ることが可能です。

法人成り後に従業員が増える場合にはその後の社会保険料負担に大きな影響があります。

参考ブログ:個人で建設業を営んでいる人が入れる国民健康保険組合について比較してみた。

企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入 難易度3 効果1~2

給与の一部を確定拠出年金に回すことで、厚生年金、健康保険など保険料を決める「標準報酬月額」の等級が下がる場合、社会保険料の削減に繋がる場合があります。ただし、導入費用や運用コストがかかったり、従業員への教育も行う必要があるなど導入するハードルが若干高いといえます。

通勤交通費の支給を工夫する 難易度1 効果1

通勤交通費も標準報酬の計算基礎に含まれます。定期代を毎月支給している場合には、4月から6月をはずして半年ごとに支給することにより社会保険料の削減に繋がる場合があります。

業務委託契約 難易度2~3 効果3

従業員として雇用せずに外注として業務依頼を行うという方法があります。業務を外注として依頼する場合は、当然、社会保険料の負担は生じません。ただし、実態が外注ではない場合には税務調査等で問題となるため注意が必要です。

被保険者に該当しない人の活用 難易度2 効果2

社会保険の適用事務所に勤務する社員でも、一定要件に該当する場合には社会保険の加入義務がありません。一定要件は会社の規模によっても異なりますが、正社員に代えて社会保険の加入義務がないような時短パートを活用することにより社会保険の削減に繋がります。

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