建設業に関係する税務法人成り・会社設立・新設法人融資・資金繰り

【建設業必須】取引先の信用調査・与信管理で押さえるべき3つのチェックポイント

建設業では、元請・下請・協力会社・資材業者など、多くの企業が関わり合いながら一つの工事が進められます。

そのため、自社の経営が安定していても、取引先の経営悪化や倒産によって、工事の中断、追加費用の発生、納期遅延、工事代金の未回収などのリスクが生じる可能性があります。

近年は資材価格の高騰や人手不足、資金繰りの悪化によって建設会社の倒産件数が増えており、取引先の信用力を見極める重要性は以前にも増して高まっています。

特に建設業界は多段階下請け構造が一般的で、取引金額が高額かつ工期も長期化しやすい業界です。そのため、取引先に支払い能力の問題が生じると、未回収リスクが一気に現実化し、自社の資金繰りや経営に大きな影響を与えかねません。

本記事では、建設業における信用調査・与信管理の必要性と、実務で使える調査の進め方を、実際の会話形式でわかりやすく解説します。

事例紹介

相談者:建設業を営むT社長 

T社の状況:T社は個人から法人成りをして開業5年目。建設業許認可を取得して以来、大きめの工事の受注が続き売上は年々増加。従業員の人数も増え、従来から付き合いのある会社以外からの業務受注も増えている。

悩み:新規でお付き合いを始める会社の中には支払いサイトが長い会社が存在し、資金繰りを圧迫している。今後のことを考え、信用調査や与信管理についてどのように判断していけばよいか悩んでいる。

なぜ建設業では信用調査・与信管理が必須なのか

ひらい
ひらい

T社長、今期は随分順調そうですね。

T社長
T社長

おかげさまで、新規の取引先も増え、売上も順調です。

ただ、少し心配な会社があって…。取引前に信用調査をやったほうが良いのではと考えています。

ひらい
ひらい

建設業では工事が長期にわたるため、資金繰りが悪い会社と付き合うのはリスクが大きいです。特に材料費を自社で立て替える場合は金額も高額になりやすいため、信用調査はできるだけ行った方が良いでしょう。

T社長
T社長

うちは今のところ大きな取引で支払い遅延はありませんが、仲間の話では結構な金額を回収できなかったケースもあると聞きます。

ひらい
ひらい

業績が良いときは仕事を選べますが、業績が悪くなるほど「仕事を選べない状況」に追い込まれがちです。
その結果、本来であれば避けるべき取引先と仕事をしてしまい、いわゆる「ババをつかんでしまう」ケースも少なくありません。

実際に弊所のお客様の中には、創業当初に発生した数百万円の売掛金が、数年経過した現在でも未回収のままという会社もあります。この未回収が原因で、一時的に資金繰りが詰まり、経営的に非常に厳しい時期を迎えたケースもありました。

建設業は連鎖倒産が発生しやすい業界です。元請の支払い遅延が下請に影響し、さらにその下請にも波及します。資金の流れが止まると、問題が一気に表面化します。そのため、取引先の信用調査は必須です。

信用調査ではどんなことを確認するのか

T社長
T社長

仕事が薄い時ほど「ババをつかみやすい」って本当におっしゃる通りですね。

他の会社では、信用調査をどのように行っていますか?

ひらい
ひらい

信用調査で一般的に行われている方法は、以下の3つの方法でしょうか。

  1. 他の協力会社からのヒアリング
  2. ホームページ・SNS・登記情報の確認
  3. 決算書や財務情報の分析

他の協力会社からのヒアリング

ひらい
ひらい

まずは協力会社から話を聞くのが手軽で参考になります。

資金繰りが悪い、支払いサイトが長い、支払いが遅延するなどの会社は、関係会社から不満が出ていることが多いです。

既に取引のある会社数社に話を聞ければ非常に参考になります。

T社長
T社長

確かに、仕事をしているとそういう話はよく耳にします。

支払い遅延の情報があれば、取引は見送るようにしたいですね。

ひらい
ひらい

長期取引や高額取引の場合は、特に慎重になる必要があります。

ホームページ・SNS・登記情報の確認

ひらい
ひらい

協力会社にヒアリングできない場合は、取引先のHPやSNSをチェックする方法もあります。

ある社長さんは、SNSから交友関係を確認し、取引を見送ったケースもありました。

ひらい
ひらい

また、HPから本社や支店、代表者住所を特定して不動産謄本を取得することで、金融機関やノンバンクの抵当権、差押え情報などを確認することも可能です。

T社長
T社長

なるほど。不動産の謄本は誰でも取得できるので、手軽に確認できますね。

金融機関への担保提供なら、普通にあることですが、ノンバンクや税務署などからの差押えが確認された場合には取引を見送ったほうが無難かもしれませんね。

決算書や財務情報からの判断

ひらい
ひらい

直近3年分の決算書を確認し、売上・利益の推移、借入金、キャッシュフロー、自己資本比率などから判断するのも有効です。

T社長
T社長

確かにそれができれば安心です。

ただ、新規取引先に決算書を求めるのはハードルが高いですね。

ひらい
ひらい

たしかに実務では難しい場合が多いです。

そういう場合は、帝国データバンクや東京商工リサーチの調査報告書を活用すると、客観的な信用スコアを確認できます。ただし、小規模事業者や調査拒否企業も多く、全ての情報は揃いません。

ひらい
ひらい

それ以外の方法として建設業で許認可を持つ会社なら、建設業向け決算概要を確認できる場合があります。建設業許可を受けている会社は、事業年度終了後4か月以内に『決算変更届』を提出する義務があります。これには年間の工事実績や財務状況が記載され、一般の方でも閲覧可能です。

T社長
T社長

なるほど。自分でも確認できそうですね。

ひらい
ひらい

例えば埼玉県では、県庁の建設管理課に閲覧申請書を提出し、手数料300円を支払えば閲覧できます。

信用調査・与信管理は定期的に行うべき

ひらい
ひらい

信用調査や与信管理は、新規取引先だけでなく、既存の取引先に対しても定期的に行うことが望ましいです。

会社によっては、財務状況・支払い履歴・トラブルの有無・経営者の評判・他社からの評価などをチェックリスト化して、判断基準を明確にしています。

T社長
T社長

なるほど。皆さんしっかり調査しているのですね。

大きな取引で失敗できませんから、早速情報集めを始めます。今日はありがとうございました。

まとめ

建設業は、多段階下請け構造・高額取引・長期工期の特性から、取引先の信用調査と与信管理が不可欠

以下のような3つの方法を組み合わせることで、未回収リスクや倒産リスクを大幅に低減できます。

建設業の健全な経営には、日頃からの信用管理が欠かせません。

  1. ヒアリング:既存の協力会社からの情報収集
  2. 公開情報の確認:HP、SNS、登記情報、不動産謄本
  3. 財務情報の分析:決算書、調査会社の報告書、建設業向け決算概要

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