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フリーランス必見 年をまたぐ源泉所得税の取り扱い


確定申告相談会などで個人事業者の方から度々『請求書は年末までに取引先に出したが入金自体は翌年以降になる。まだ未入金の売上高に対応する源泉所得税の取り扱いはどうすればよいか?』といった質問を頂きます。

このような場合、まだ未入金であっても、売上計上を行った年の源泉所得税として取り扱うことになります。

しかし、支払調書の金額と相違する場合があったり、取引先の源泉徴収の義務が生じる時期との違いなどすっきりしない点もあると思います。

そこで、以下で会計処理を理解し、確定申告書に記載すべき金額について確認します。

会計処理を確認しよう


検討事案

前提条件として個人事業者Aについて以下の取引を考えます。

平成29年12月20日 B社へ請求108,000円(源泉所得税 10,210円)

平成30年1月30日 B社より97,790円の入金あり。

会計処理

売上は発生主義により計算することになります。

そのため、売上高は請求書ベースで計上することになります。

そして、B社が請求金額の振込を行う際、源泉徴収を行ったあとの金額が振り込まれるといった仕訳になります。

通常の処理方法

平成29年12月(発生主義により売上計上)

売掛金 108,000円 / 売上 108,000円

平成30年1月(源泉所得税控除後の金額による入金)

現預金  97,790円 / 売掛金 108,000円

事業主貸 10,210円 

ただし、年末を跨ぐ場合には仮払源泉税の金額を把握しておきたいので便宜上下記の仕訳を行うこともありかと思います。

便宜上の処理方法

平成29年12月

売掛金   97,790円 / 売上 108,000円

仮払源泉税 10,210円

平成30年1月

現預金 97,790円 / 売掛金 97,790円

確定申告書において控除の対象となる源泉所得税の額


翌年に入金する売上高に対する源泉所得税の控除すべき年は、売上計上の日の属する年か?

それとも取引先が源泉徴収すべき日(翌年度)か?取り扱いとしてはどちらが正しいのでしょうか。

売上に対応するものであるから、売上計上の日の属する年か、実際に源泉徴収された翌年度か迷うところかと思います。

ここで参考になる条文を確認してみます。

所得税法第120条1項5号ではその年において控除すべき源泉所得税について明記されています。

そこにはその年の確定申告を行う際に各所得から計算された所得税から控除する源泉所得税として「源泉徴収された又はされるべき所得税」と記載されています。

そのため、例え、翌年度に源泉徴収されるべき所得税であっても今年の確定申告の際、源泉徴収税額とし控除しても良いということが解ります。

(参考 所得税法第120条1項5号)

第一号に掲げる総所得金額若しくは退職所得金額又は純損失の金額の計算の基礎となつた各種所得につき源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額(当該所得税の額のうちに、第百二十七条第一項から第三項まで(年の中途で出国をする場合の確定申告)の規定による申告書を提出したことにより、又は当該申告書に係る所得税につき更正若しくは決定を受けたことにより還付される金額その他政令で定める金額がある場合には、当該金額を控除した金額。以下この項において「源泉徴収税額」という。)がある場合には、第三号に掲げる所得税の額からその源泉徴収税額を控除した金額

なぜ、迷ってしまうのか?


迷ってしまう最大の理由は、取引先からもらう支払調書と相違が生じるためではないでしょうか?

1月中旬から2月中旬までに取引先から支払調書が届くと思います。この支払調書の記載金額に間違いが多いことから混乱が生じます。

支払調書に記載すべき金額を国税庁の手引きで確認してみます。

手引きには記載すべき報酬金額等は年度末の未払部分を含めた金額とし、未払部分は内書きすることになっています。

しかし、多くの支払調書では、実際に支払った金額を記入している場合が散見されます。

その理由を考えてみると、源泉徴収義務は、実際に支払ったときに発生することが原因となっていると思われます。

つまり、支払調書を作成する1月中旬時点では企業としては実際に未だ報酬を支払っておらず、源泉徴収をしていないわけです。

にもかかわらず、支払調書はまだ源泉徴収していない分も含めた金額を記載する必要があり、記載金額のミスが生じます。

このような事情から支払調書に記載される金額に間違いが生じると思われます。

国税庁HP(法定調書の記載手引き)

まとめ


  • 控除の対象は年度末に未収になっている売上に対応する源泉所得税も含めた金額
  • 支払調書の金額は鵜呑みにはしない。場合によっては差異が生じて仕方がない。
  • 源泉所得税の会計処理は期中は仮払源泉税として集計し、金額把握を行い、決算時には事業主勘定にて相殺をかける。
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