創業時は、新たに事業を始めるため、特に資金が必要な時期です。
自己資金で賄えない場合には、当然融資を検討することになります。
本記事では、建設業で独立を目指す方との実際の相談を通じて、
- 自己資金がある場合でも創業融資を受けるべき理由
- 創業融資のタイミングで注意すべき点
- 起業家として考えておきたい資金戦略
をわかりやすく解説します。

創業融資に関するご相談事例
相談者:A社(建設業)A社長
相談経緯:A社長はサラリーマンとして建設会社に15年ほど勤務してきました。5年ほど前から自分自身で起業することを目標にお金を貯蓄しており、起業するにあたり、アドバイスを求めて弊所にいらっしゃいました。

A社長、通帳を拝見したところ、独立を視野に一生懸命にお金を貯められてきたことが伝わってきます。日々の生活がある中で目標を立ててお金を貯めることはなかなか出来ることではないと思いますので素晴らしいですね。

有難うございます。
勤めていた会社も建設業許可をとっていたので許認可の財産要件である500万円を目標として頑張って貯めました。
法人設立後は建設業許可も取れそうですし
ありがたいことに今まで付き合いのある方からお仕事のお話しも頂けそうなんです。

それは幸先が良いですね。

そうですね。
こんなに早く仕事を頂けるとは思っていなかったので、急いで道具や材料などを揃えているところです。
法人設立費用や車・道具などを揃えてみたら意外にお金が出ていき、資金は半分以下になりましたが、何とかギリギリ資金は足りそうかなと思ってはいます。

創業融資はどうするおつもりですか?

融資は「借金」というイメージがあり、出来ればしたくないと考えています。
私の父はサラリーマンをずっとやってきた人でしたので、「借金」はするなと小さい頃から言われて育てられたため、何だか抵抗があります。
今後、商売をやっていく中で融資についてどう向き合えばよいでしょうか?

確かに借金は利息が発生するため、出来ればしないほうが良いと思います。
ただし、それは最終目標と捉えるべきだと私は考えています。
事業を行ううえで融資を上手に利用できるスキルは必須といえます。
特に創業融資については潤沢に資金を持っている方を除いては受けておいたほうが良いと個人的には思っています。

同世代の独立している知人に話を聞いたときも「創業融資」を受けたとは聞いています。
また、融資は受けられるときに受けたほうがいいよとも言われました。

そうですね。
私もその友人と同意見です。
通常の融資は事業の実績(決算書)に基づき判断されますが、創業融資は実績がないにも関わらず、事業計画に対してお金を貸してくれるという特殊な融資制度です。
一般的には、創業してから商売が軌道にのるまでは時間がかかるものです。
人によりその時間はまちまちですが、その時間が長ければその分お金が必要になります。

なるほど、それでは今ある資金が無くなりそうになったら融資を申し込むという考え方はいかがでしょうか?

私としては資金が底をつきそうになったタイミングでの融資申請は、あまりおすすめできません。
理由としては
①創業からある程度時間が経過すると実際の業績がでてきます。お金が無くなった時ということは悪い業績で融資を申し込むことになる。
②初めて融資を受ける場合には時間がかかります。(政策金融公庫なら1か月。制度融資などであれば2か月程度)そのため、資金が少なくなり始めてから融資を申し込んだ場合には間に合わない可能性もあります。
少しでも資金的な不安がある場合には創業融資は受けておく必要があると個人的には思います。

なるほど。借りやすいときに借りてしまうというのも考え方の一つというわけですね。

そうですね。
よく金融機関は「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」と言われますが、これは当然の話なんです。金融機関は慈善事業ではなくビジネスですから、事業が上手くいっていない人には融資はしません。融資をいつ受ける必要があるかということも経営者のセンスが問われる問題だと思います。

商売をやる前から上手くいかなったらのことを考えて創業融資を受けておくなんて考えもしませんでしたが、経営者としてリスクヘッジをしておくことは確かに重要ですね。お金はあって邪魔になるものではありませんし。
創業融資は比較的金利負担も低いと聞きますので、検討したいと思います。

創業融資を受ける場合には事業計画書や資金繰りについても考える必要がありますから良い勉強にもなりますよ。サポートが必要な場合にはおっしゃってください。
お父様の教えは一般的には正しいとは思いますが、現時点では無借金経営を最終目標と位置付けると良いかもしれませんね。
まとめ:創業融資を“保険”と考える発想を持とう
創業時は、まだ実績がない段階でも事業計画をもとに融資が受けられる、非常に珍しいタイミングです。
だからこそ、「お金が減ってからでは遅い」「借りられるうちに借りておく」という戦略的な視点が必要です。
- 自己資金があっても、予想外の出費や売上の遅れに備えるべき
- 創業融資は金利が比較的低く、使い勝手が良い
- 融資を受けることで、資金計画の精度も上げる
無借金経営を目指すことは素晴らしい目標です。
しかし、その道のりの中で「上手に融資を活用する」というのは、経営者としての重要なスキルの一つです。
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