税務調査

個人事業主は家族に給与を支払うときには注意が必要


個人事業者の皆さまにとってはようやく確定申告が終わりほっとしたのは束の間、あと2カ月ほどすると税務調査の連絡が入り始めるころとなります。

業種により、チェックポイントは違えど、個人の税務調査では共通して重点的にチェックされる項目がいくつかあります。

今回はその中でも家族に対する給与を取り上げます。

家族への給与はすべて必要経費になるわけではなく、税務調査でも課税庁と納税者の見解の相違が生じるポイントでもあります。

特に追徴税額も多くなるため、しっかりポイントを掴み適切な対応をとることが重要です。

親族に支払った給与は経費に出来ない?


個人事業主が自身が営む事業の手伝いをしてくれた親族に対して給与を支払うことは多いと思います。

しかし、この支払いが個人事業主の必要経費になるかどうかは意外に複雑です。

生計一親族かどうか?


生計を別にしている親族に対して支払う給与は、一般の従業員等と同様の扱いになり、必要経費に算入させることが可能です。

一方、生計一親族に対する給与は、個人事業主が青色申告の承認を受けているか否かにより、取り扱いが異なります。

青色申告の承認を受ける個人事業者の場合には、「青色事業専従者給与に関する届出書」に青色事業専従者の氏名や職務内容、支給額等を記載し、提出している場合には必要経費に入れることが出来ます。

しかし、白色申告者の場合には、支払いをした給与は必要経費に算入させることは出来ず、専従者控除(最大で配偶者86万、それ以外50万)となります

相談事例


【質問事例】

私は内装業を10年ほど前から個人事業主として営んでおり、今まで白色申告にて確定申告をしてきました。

去年3月に同居している長男が高校を卒業し、私の事業を毎日手伝ってくれることとなりました。

そこで、長男には毎月20万円の給与を支払い、7月と12月にはそれぞれボーナスも支払ってきましたが、長男に対する支払額は確定申告の際、経費にならないのでしょうか?

【結論】

残念ながら、去年の確定申告において長男に支払った給与は必要経費に算入させることは出来ません。代わりに事業専従者控除が認められます。

【対応策】

去年の確定申告提出期限である今年の3月15日までに「青色申告承認申請書」の提出と「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出することにより今年分から認めてもらえるように対策をしておきましょう。

事業専従者の要件


生計一親族に対し、給与を支払い、尚且つ経費に算入させるためには、青色申告の承認と青色事業専従者給与に関する届出書が必要であることは上記で述べたとおりです。

これらの事実関係は形式的なものであるため、課税庁と解釈が異なることはありません。

しかし、事業専従者に該当するかどうかは税務調査でも厳しく追及されます。

ポイントとしては

  • 専ら事業に従事しているか?(青色申告・白色申告とも)
  • 労務の対価として相当であるか?

専従者控除(白色)に比べ専従者給与(青色)のほうが論点ポイントが多いのも特徴です。

専ら事業に従事しているか?


この要件は専従者給与(青色申告)・専従者控除(白色申告)ともに共通して満たす必要がある項目です。

判断については所得税法施行令165条に具体的に記載があり、

「事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月をこえるかどうかによる。」とされています。

(ただし、年の中途に事業専従者となった場合などは別途基準があります)

税務調査では、事業専従者の実態を把握し、他の仕事をしていないか、実際に業務に従事しているかを厳しく確認します。

日報などにより、業務に従事している時間や従事している業務内容を説明出来ようにしておくことが重要です。

労務の対価として相当?


青色専従者給与の判定基準については所得税法施行令164条に規定されます。

そこには以下の基準により算定を行うこととされています。

  • 労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度

  ☛ どれだけ働いているのか?

  • 他の使用人が支払を受ける給与の状況や同業種の類似規模に従事する者の給与

  ☛ 親族外の従業員と比較してバランスはどうか?

  • その事業の種類及び規模並びにその収益の状況

  ☛ 事業主の利益とのバランスはどうか?

これら3つの基準により、一般常識の範囲内で給与を決定しましょう。

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