いよいよ、インボイス制度が導入されるまで1か月を切りました。
私もお客様に登録番号についてご案内をつい先日だしてホッとしたところです。
実際に導入となると想定していなかった問題が色々と起こりそうですが、先日、顧問先様から「はっ」とする質問を頂きましたのでご紹介したいと思います。
【質問事項】
売掛金を振り込んでもらう場合に相殺される振込手数料の取り扱いについてインボイス
支払い先A社(以下A社といいます)から「インボイスに関するお願い」という案内文が届きました。インボイスの関係もあるので事務の合理化のため、今後の振込手数料等負担は買い手側で負担をお願いしたいといった内容です。
振込手数料の話は改正により少額な返還インボイス交付義務免除により解決しているはずですよね?
そう考えていたのですが、案内文にはインボイス交付の手続きを簡便化してお互いの事務手続きの効率化を図ることを目的としてとあります。
A社に確認してみたところ、A社としては相殺される振込手数料は課税仕入として処理しているので、支払いの際に振込手数料を差し引いて支払った場合にはインボイスの交付義務が発生するとの返答でした。
なるほど「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」の問30には「売手が負担する振込手数料相当額」に関する記載があり、売上値引と振込手数料(課税仕入れ)のいずれかにより処理する場合が想定されており、振込手数料相当額が1万円未満であっても処理方法により取り扱いが異なると明示されていますね。
問 30 売手からの代金請求について、取引当事者の合意の下で買手が振込手数料相当額を請求金
額から差し引いて支払うことで売手が負担する商慣行があります。この売手が負担する振込
手数料相当額について、適格請求書等保存方式の開始後、売手が代金請求の際に既に適格請
求書を交付している場合に、必要となる対応を教えてください。【令和5年4月追加】
ご質問の場合、取引当事者間の契約関係等により、次のように対応が分けられます。
1 売手が振込手数料相当額を売上値引きとする場合
売手は、振込手数料相当額について売上値引きとする場合、売上げに係る対価の返還等を
行っていることとなりますので、原則として、買手に対して適格返還請求書を交付する必要
がありますが、一般的には、こうした振込手数料相当額は1万円未満となると考えられます
ので、その場合は適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります(新消法 57 の4
③、新消令 70 の9③二)。
2 振込手数料相当額について、売手が買手から「代金決済上の役務提供(支払方法の指定に
係る便宜)」を受けた対価とする場合
売手の買手に対する課税資産の譲渡等と、買手の売手に対する代金決済上の役務の提供は、
それぞれ異なる課税資産の譲渡等となります。
したがって、売手は、請求金額から差し引かれた振込手数料相当額について、仕入税額控
除の適用を受けるためには、買手から交付を受けた適格請求書の保存が必要となります。
なお、売手は、請求金額から差し引かれた振込手数料相当額について、仕入明細書等を作
成し、買手の確認を受けて仕入税額控除を行うこともできます(新消法 30⑨三)。
私の場合、これを読んで「売上値引」として処理し、消費税の処理を売上に係る対価の返還として処理する予定でした。
ただ、上記の2で処理することも当然認められるわけですから、先方が言っていることも間違いではないですよね。
振込手数料は一回の金額は大した金額ではありませんが年間となるとバカに出来ない金額ですよね。
確かに・・・・。一回あたり880円とした場合、12カ月分で約1万円になります。
例えば取引先数が百社ある場合には、それだけで年間あたり百万円になりますから、この「案内文」の効果は大きいですね。
そう考えてみると、今回は特に最もらしい理由が付きますし、交渉をするチャンスかも知れませんね。
「塵も積もれば山となる」といったところでしょうか。
今回のように振込手数料を買い手(お客さん)にしてほしいとは言いづらいところでもあるため、実務上、どのくらい広まるかをみておく必要がありそうですが、回収コスト分が浮けば利益の金額を押し上げる効果もあるため検討の余地はありそうですね。