仕事柄、今までに多くの決算書をみてきました。
内容的に問題があるものから、もう少し工夫すれば良い決算書になりそうなものまで様々です。
決算書の内容は今までの積み重ねによるところが大きいため劇的に良くはなりませんが、『良い決算書』にしていこうと意識するだけでも随分違ってくるものだと思います。
決算書に関する私の失敗エピソード
私がはじめて決算書に関する重要性を痛感したのは、20年ほど前のある出来事がきっかけでした。
最近は、会計事務所が仕訳入力を行い試算表を作成することは少なくなりつつありますが、当時は資料をお預かりし、その資料に基づき記帳をし、試算表を作成したうえで、お客様にお届けすることがほとんどでした。
当時、私は仕事をはじめて1~2年ほどの新人で、資料を誤って解釈し、間違った試算表を作成してしまいました。
そして、その間違いをお客様から指摘を受けました。
その際、「平井さん、試算表の重要性を理解して仕事をしてください。私はこの試算表に基づいて会社の経営判断をするんですよ。」と言われたことは今でも忘れられない出来事です。
決算書であれば、その重要性はなおさらです。
『良い決算書』とは?
会社にとって良い決算書とはどのようなものでしょうか?
この答えは実は1つではありません。
会社の状況、社長の考え方により大きく異なります。
例えば、事業規模を拡大したいと考えている社長であれば、利益をしっかり出し、財務内容を充実させたうえで金融機関から融資を受けやすし、新規取引先からも信頼が得られる内容の決算書が「良い決算書」となります。
一方、事業規模の拡大を考えておらず、潤沢に資金を保有している会社である場合、考えることは節税対策です。このような会社の社長にとっては十分な利益は税負担が重くなってしまうため必ずしも良い決算書とはなりません。
『良い決算書』を作るには?
良い決算書とは会社によって異なることは説明したとおりです。
それでは「良い決算書」を作るにはどうしたらよいのでしょうか?
答えは簡単。
自社にとっての「良い決算書」が何であるか?を決算書作りを担当する税理士等に期首に明確に伝えることです。決算間近になり色々と注文を付けてもやれることは決まっています。
期首に今期はどのような決算着地にするかを一緒に考え、目標作りをするのです。
もちろん、一年間の売上予想なんてわかるわけないし、一年の間には予想外のことが起きるから、そんなの無意味だという気持ちはわかります。
しかし、この決算着地の数字がなくして「良い決算書」は出来ません。
「良い決算書」の指標がないからです。
決算書の重要性を理解させよう
何度も言いますが決算書は非常に重要です。
資金融資、競争入札、新規の取引先との取引口座を開設するためなどの判断材料になります。
しかし、残念ながらこのこと日頃から意識している税理士は意外に少ないです。
その理由は税理士は税金の専門家だからです。
自分の事務所を持ち、事業を行っている税理士本人であれば、融資や営業についても考えが及びます。
しかし、あなたの会社を税理士事務所の従業員が担当している場合には、なかなか考えが及ばない部分だということを意識し、日頃から決算書の重要性を伝えておくことが重要です。
決算書は一年に一度しか作成されないものであり、作成後、一年間その決算書が重要な場面で判断材料にされてしまいます。
是非、積極的に決算書作りに関わっていきましょう。