一般建設業許可の場合、最もハードルになるのは「専任技術者」と「経営業務の管理責任者」の要件と言われています。
一方、特定建設業の場合には、大規模な工事で下請け業者を保護する目的から、会社に十分な資金力・財務基盤があることが厳しく求められるため、財産的基盤が一番のハードルとなります。
そのため「将来的に大きな元請案件を狙いたい」「特定建設業許可を取得・維持したい」という場合、日々の経理処理と決算書の数値をしっかり意識することが極めて重要になります。

今回は、特定建設業許可の取得を検討されているお客様との打ち合わせをもとに、財務内容をどのように確認し、どのような対策を検討したのかを対話形式でご紹介します。
A社長・・・A社の社長。誠実な人柄で元請けからの信頼も厚い。
A会社・・・設立10年目。資本金500万円。コロナ収束後は順調に利益はあげているものの内部留保はそれほど多くはないが、社長の誠実な人柄もあり、徐々に大きい仕事が任されている。

A社長、最近は業績順調ですね。
コロナが明けてから売上も右肩あがりですし。
上半期が過ぎましたが、下半期の売上はどんな感じでしょうか?

はい。お蔭様で順調です。
下半期も大きな増減もないため、この調子でいけば黒字決算になるはずです。
また、有難いことに来期以降は大き目の仕事を頂けそうです。
そのため、いよいよ特定建設業許可を取得しようかと考えておりますが要件的には該当しそうでしょうか?

なるほど。特定建設業を取れば工事の大きさは気にせず仕事は取れるようになりますから、良いかも知れませんね。
要件としては以下の通りです。
- 経営業務管理責任者がいること
- 専任技術者がいること
- 誠実性があること
- 財産的基礎を満たすこと
- 欠格要件に該当しないこと

「4」以外については自分でも確認したところ問題はなさそうなのですが、我が社は「4」の財産的基礎は満たしているのでしょうか?

残念ながら現状では満たしていません。
財産的基礎とは以下の4つをすべて満たすことです。
- 欠損の金額が資本金の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金が2,000万円以上であること
- 自己資本の額が4,000万円以上であること
残念ながら現状では「1」以外の要件は満たしていません。

ただ、条件を満たすように手を打てれば取得できる可能性が出てきます。
まず、一番容易で「2」~「4」も考慮するのであれば有償増資を行うことが効果的です。ただ、A社長個人のお金を会社に出資してしていただく必要があります。

うーん・・・・。
個人的には子供の学費なども考えると捻出できる金額は5百万といったところが上限です。
そうすると資本金は1000万にしかならないですね・・・・。

確かにA社長のお子さんは年子だから学費は結構大変そうですもんね。
資本金については無償増資という方法もあります。利益剰余金を利用して資本金の増資を行うのですが、無償増資を行った場合には「2」「3」には影響がなく、かつ利益剰余金が少なくなってしまうため、その後の決算における欠損要件には注意が必要となります。

なるほど、そんな方法もあるのですね。
それであれば資本金は2千万円にすることが出来そうですね。また、今期は利益が結構出そうな予定なので何とか純資産の金額を4千万円に届きそうです。
ところで、新車でトラックの取得を考えているのですが、時期は考えた方が良いでしょうか?

そうですね。
全額融資を受けて購入するのであれば影響は少ないのですが、現預金で一括購入となると現預金という流動資産が固定資産である車両へ変わるため、流動比率が低下する可能性があります。流動比率要件には注意しておいた方が良いかと思います。

そうですか・・・・。
一般建設業の取得した際はそれほど財務内容についてはうるさくなかったけど、特定建設業の場合には財務内容がかなりハードルになりますね。

そうですね。
元請として下請保護のため、強固な財産的基礎を求められますから、更新のときもこの直近の決算書で「資本金2,000万円以上」「自己資本4,000万円以上」「欠損割合が資本金の20%以下」「流動比率75%以上」を維持しているか厳しく見られます。
決算内容が悪くなり、特定建設業から一般建設業への格下げもあり得ますので、特定建設業を維持するためにも財務内容について今まで以上に注意が必要となってきます。
まとめ
特定建設業許可では、一般建設業許可と比べて財産的基礎がより重視されます。
特に、財産的基礎要件の「資本金2,000万円以上」「自己資本4,000万円以上」「欠損割合」「流動比率」といった4つの要件は、取得時だけでなく更新時にも確認されるため、日頃から決算内容を意識した経営を行う必要があります。
「決算が終わってから考える」のではなく、決算を迎える前から資本金や自己資本、流動比率などを確認し、必要に応じて増資や設備投資の時期を検討することも必要になります。
特定建設業許可の取得を目指している方は、事業計画と決算対策を一体的に考えながら、早い段階で準備を進めることが重要です。
ひらい税理士事務所 代表税理士
埼玉県越谷市・草加市を中心とした近隣地域において、地域密着型の税理士として活動。
地域金融機関や関連他士業等とのネットワークを活かし、法人決算業務にとどまらず、資金繰り・融資支援、税務調査対応、相続税・資産税業務など、経営者の幅広いニーズに対応。
これまで多くの税務調査に立ち会ってきた経験と、金融機関を意識した決算・申告書作成には定評があり、経営の安定と将来の発展を見据えた実践的なサポートを行っている。
